イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

留学気分を盛り上げていく

留学っていったらやっぱり英語圏だなと思った。英語以外はできる気がしない。

アメリカは違うなと思った。アメリカ留学者には申し訳ないけど、なんかミーハーな気がしてちょっと僕の考える留学のイメージと違う。

アメリカは明るすぎる。陽気すぎる。軽すぎる。だいたいマスターキートンにはアメリカが舞台の話がない。

というわけでアメリカは早々に選択肢から外れた。

 

留学は「洋行」なのだ。なんというか、明治の偉人が西洋に追い付こうと必死に勉強した時の欧州のような、歴史ある格式高い建物、薄暗い部屋とどんよりとした空気、シャーロックホームズが出てきそうな妖艶な、知的な、ノスタルジックな…

当時(20年以上前)はほんとに気負ってたなと今書いてて思う。実際にイギリスに渡った後は失望も大きかったけど、まあ自分の勝手な思い込みのせいもあるわな。

 

思い込み、断片的な情報に基づく理想化、マスターキートンの影響やらで最終的に僕はイギリス留学を目標に据えた。まあイギリスに行きたいから留学を決めたようなもんだけど。

 

留学とはいうものの、学びたいことなんか別になかった。アカデミックな雰囲気を味わいたいだけだったのかもしれない。なんかかっこいいな、くらいな気持ち。

ただ、学者になりたいという思いは留学を決める前からずっとあった。自分がそんなものになれるわけないと思いつつも、夢を捨てきれなかった。

せっかくなら留学して博士号を取りたい。おお、そしたらマスターキートンみたいじゃないか。気分が高揚した。

 

じゃあ挑戦してみるか、というわけで留学の準備を始めた。

 

準備ってなんだ?何したらいいんだ?

 

当時ももちろんネットはあったけど、ネット上の情報は今よりはるかに少なかった。

すぐ留学というのは無理そうだと思ったので、留学開始目標を数年後にした。

まず日本の大学の学部を卒業して、あわよくば修士号を日本で取って、そのあと留学して博士号を取る、と。

これで結構時間に余裕ができる。

 

まず、他人のイギリス留学の体験記に触れることから始めた。

藤原正彦氏という数学者がいる。数学者だけどエッセイも書いていて、彼の書いた「遥かなるケンブリッジ」という本は少し有名だった。それを買って夢中になって読んだ。

ちょうどそのころ(かどうかは分からない、再放送だったかもしれないしもっと後だったかもしれない、記憶があいまいで)、NHKで「世界・わが心の旅」という番組で、今の皇后の父上である小和田恒氏が若き留学時代を過ごしたエディンバラケンブリッジを訪ねていた。この番組をビデオ録画してテープが擦り切れるほど何度も繰り返して観た。

そのほか、林望氏のエッセイやら、吉田茂の息子の吉田健一の「英国に就て」とか、はては夏目漱石の「倫敦塔」…

 

挙げてみると古くっさい情報ばっかり。だからあんなにイギリスにゆがんだ幻想を持っちゃったんだろうな。