イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

エディンバラの一夜

エディンバラに着いて一日観光した。今回はその続き。

 

エディンバラには当然ながら店がたくさんあった。僕はなぜかそれがとてもうれしくて、本屋で英語とドイツ語の文法書を買った。スマホより小さくて持ち運びが非常に楽なやつ。なぜそんなものを買ったのか分からないし、じっくり読んだこともない。

 

エディンバラには有名な観光名所のエディンバラ城がそびえたつ。でも入場が有料なのでその時は遠くで眺めるだけだった。

この城の中に入ったのは何年もあとの事だった。

 

エディンバラ大学の前を通りかかる。僕はこの大学にも願書を出していたことを思い出した。この街の雰囲気はとても良さげだったので、「ここでもよかったかなあ」と少し後悔した。

エディンバラ大学は願書を出しただけで合格証と学生証までわざわざ日本に送ってきてくれた、とても親切な大学だった。僕のスコットランドに対する好印象も、こういう細かい経験の積み重ねのためなのだ。

この大学にしていたら僕の人生はどうなっていただろう。

 

ちなみにイングランドにいい印象がないのも、細かい嫌な経験の積み重ねの結果だ。

 

夕方になり、街の中心部にあるユースホステルに集合する。

エディンバラは崖が多い。そのユースホステルは崖際に立っていて、窓の外は断崖絶壁だった。大きな街らしく若者でにぎわっている。

共同キッチンは小さかった。若者たちがひっきりなしに出入りしては何かを作っている。床も机も残飯やゴミで汚かった。なにより若者たちが裸足でその汚い床を歩き回っていることに僕は嫌悪感を持った。

 

僕らが持ってきていた日本食のストックはほとんどなくなっていた。エディンバラがほとんど最終目的地だったので、量としてはちょうどよかった。

 

Sさんがパブでのライブの広告を見つけたという。僕らがアラプールで出会った流しの歌手だ。その歌手を非常に気に入っていた僕とSさんは連れ立ってそのパブに行くことにした。

ライブは楽しかった。アラプールのさびれたパブとは違い、エディンバラのパブはまさにイギリスのパブという感じでとても良かった。

 

その日の夜、8人部屋で寝ていた僕は大絶叫の歌声で目が覚める。時計を見ると午前2時過ぎ。ほかのみんなはぐっすり寝ていたけど、僕はその騒音でまったく眠れなくなり、しまいにはものすごく腹が立ってきた。

部屋を出て、談話室に行くと若い兄ちゃんが女の子2人の前でギターをかき鳴らし大声で歌っている。そのシチュエーションにも腹が立った僕は、「眠れないからやめろ」とその兄ちゃんに文句を言った。

兄ちゃんは「ああすまんすまん」と言って笑ったけど、僕は無視して部屋に戻った。

それから歌声が聞こえることはなかったけど、僕はまだムカムカしてしばらく眠れなった。

 

旅行が終わりに近づくにつれ、僕の苛立ちはどんどん増していった。