イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

イギリス大学に出す願書を用意する

留学開始まで1年を切った。イギリスの大学は10月からスタートするので、その1年前の秋ごろから留学のための書類をそろえる。

「願書受付はいつからいつまで」という具体的な期日はない。少なくとも大学院留学の受付にはなかった。しかし、席は早い者勝ちだ。早く出せば出すほどチャンスは大きくなる。

僕は、先に決めていた志望校5大学の願書を送るために準備を始めた。

その時点でも、相変わらず英語の点は足りていなかった。

 

願書を送る大学は、ケンブリッジ、オックスフォード、エディンバラグラスゴー、そしてインペリアルカレッジの5大学。

第一志望は同列でオックスフォードとケンブリッジ。第二志望はインペリアルカレッジ、第三希望はエディンバラ、第四希望はグラスゴーだった。

なぜ土壇場でインペリアルが第二志望にのし上がったのか、よく覚えてない。たぶん優秀な大学だったからだろう。インペリアルカレッジはロンドンにあるので、ロンドンにちょっと住んでみたかった気持ちもあったのかもしれない。

 

願書は確かネットでダウンロードできたはずだ。郵送で取り寄せた覚えがない。当時所属していた大学院の研究室で一人セコセコと印刷してたのを覚えてる。

 

願書自体は別に何も難しいことはない。難しかったのは「志望動機」と「推薦書」だ。

志望動機とはその名の通り、なぜその大学を志望したか、なぜそこで学びたいかを作文で書くものだ。「エッセイ」とも呼ばれる。だいたいA4で1枚くらい書く。

確か「エッセイの書き方」みたいな本を買って参考にしたと思う。何を書いたかはまったく覚えてないけど、同じような文をそれぞれの大学のエッセイに使いまわしたと思う。

 

推薦書は自分の所属する大学の先生に書いてもらうものだ。けど先生も暇じゃないので、いつでも書いてもらえるとは限らない。しかも僕は不真面目な学生だったので、先生が推薦書にいいことを書いてくれる自信がなかった。

留学指南の本には「推薦書は自分で書いて先生にサインだけしてもらえ」と書いてあったので、僕は推薦書を自分で書いた。ありったけ自分を褒めて、いかに優秀な学生かを推薦書でもアピールした。

ほとんどの大学は推薦書を2通要求する。オックスフォードは3通だった。つまり推薦書を3通り書かなければいけないのだ。これもなかなか難しかった。

 

志望動機と推薦書で合わせて2カ月くらいかけたと思う。

 

推薦を頼んだのは、まず自分の指導教官。それから別のゼミの教授。3通目が必要なオックスフォードに関しては、同じ研究室に属している助教の先生に頼んだ。

別のゼミの教授は、僕は推薦を頼むまでまったく話した事がなかった。過去にその先生の授業に出たぐらい。当然先生は僕のことを知らないので、推薦なんかしようがない。でも、その先生はとても穏やかな人柄だったので、頼めばきっと快諾してくれるだろうと踏んだのだ。

向こうが僕のことを知ってるかどうかなんて、そんなことはどうでもいいのだ。

 

指導教官は、ちらっと推薦状を読んで、さらさらとサインしてくれた。「お前ほんとに留学するつもりなのか?」と半信半疑のようだった。そりゃそうだ、僕はほんとうに研究のできないダメ学生だった。

助教の先生は、普段は毒舌で「今が一番社会に高く売り込めるのに、お前は全然ダメだな」とよく嫌味を言われたけど、留学のことを話すとシリアスな様子で「わかった、がんばれ」と応援してくれて、また嫌味を言われるかと思っていた僕は「この人いい人だったんだ」と少し驚いた。

別のゼミの先生は印象通りの本当にいい先生だった。推薦状について相談のメールを送ると、突然のメールにもかかわらず即座に返事が来て「貴君の大志を全力で応援します」みたいな教養人らしい言葉で快諾してくれた。

 

今思い出したけど、その別のゼミの先生は僕が大学院試験を受けたときに面接試験の試験官だった。先生は難しい専門的な質問は何もせず、「座右の銘は何ですか?」とだけ聞いてきた。その簡単な質問のおかげで僕は合格できたのだ。専門的な事を聞かれたら絶対アウトだった。

別のゼミの先生、ありがとう。