イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

マンチェスターで入国する

上空から見るマンチェスターはとにかく赤茶けた印象だった。

レンガの家とそのくすんだ屋根がたくさん並んでいる。殺風景だったけど、日本にいるときにイギリス映画を観ていたのでその映像通りの光景に感動した。

 

マンチェスター空港について、入国のために並ぶ。初めてのヨーロッパ入国だ。とても緊張した。

 

入国審査官は人のよさそうなおじさんだった。僕の英語はとてもつたなかったと思う。とにかく書類をたくさん用意して、何を聞かれても答えられるようにと身構えた。

当時持っていた「地球の歩き方」というガイドブックにはいかに入国審査が恐ろしいかが長々と書かれていた。ネットや留学情報本などでも、入国審査でトラブルになった人の体験談があふれていた。

 

審査のために持っていた書類は、パスポート、語学学校の入学許可証、大学の合格通知、トラベラーズチェック、飛行機のチケットぐらいだったと思う。たしか語学学校の書類くらいは見せたような気がする。

入国審査官はゆっくりとした口調で滞在の目的を聞いてきた。僕は留学と答えた。どこに留学するのかと聞かれたのでウェールズの語学学校に行ってそれからロンドンに行くつもりだと答えたと思う。その時に語学学校の書類を見せたのだ。

これがのちにトラブルの元になる。

 

パスポートにハンコを押してもらい、審査自体は問題なく終わって入国を果たす。

 

ここがイギリスか。

 

現地時間は朝だった。マンチェスター空港はそこまで大きい空港じゃなかったと思う。一緒に載っていた乗客は誰も残っていなかった。ここは日本じゃないんだと認識するにつれ、猛烈な孤独感に襲われる。僕はとりあえず街の中心まで行くことにした。けれどどう行っていいのかよく分からない。

とりあえず電車の駅っぽいところに行ってみる。誰もいない。チケットの買い方も分からない。プラットホームに日本の郵便ポストみたいな形をした券売機らしきものがあったのでそこでチケットを買おうとするけど、買い方が分からない。

 

たまたま通りかかったイギリス人夫婦が僕に何か言ってきた。突然のことでびっくりしてまったく理解できない。彼らは最後に「フリーだ」と言っていて、それで僕は「切符いらないの?」と気づく。なぜ無料だったのか今でも分からない。

その時、たしか電車が来たと思う。イギリス人夫婦はチケットを買わずに乗っていった。僕はその時電車に乗ったのかどうか、よく覚えていない。乗ったような気もするし、怖くて乗らなかったような気もする。とにかくそのあとバスで中心街に行ったことは覚えてる。

 

バスに乗ってボーっとイギリスの街並みを眺める。イギリスの信号機は日本のに比べて小さかった。しかも道路の上方じゃなくて道端に立っている。これを見ただけでもカルチャーショックだった。

 

そうして僕はマンチェスターの中心に到着した。予定ではマンチェスターで一泊し、翌日ウェールズの英語学校に向かうことになっていた。