イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

楽しい生活の始まり

イギリス留学二日目、僕はウェールズにある英語学校に着いた。

イギリスはイングランドスコットランドウェールズ北アイルランドの4つの地域に分けられる。ウェールズはイギリスの左側にあり、日本ではあまり名を耳にすることがない地域だ。僕もそこに実際に行くまでどんなところなのか知らなかった。

 

バス停から英語学校に向かうとき、僕は奇妙なものを見つけた。

道路に変な文字が書いてある。アルファベットで書いてあるけど「rr」とか「yy」とか妙に同じアルファベットが重なり英語読みができない。これがウェールズ独特の言葉、「ウェールズ語」であることは後に知った。

イギリスでは英語が公用語だけど、別の言葉も使われているのだ。

 

英語学校が普通の家だったことは前にも書いた。

そこにはまだ人が残っていて、3人の日本人が僕を出迎えてくれた。一人は男性、あとの二人は女性。3人とも僕より少し年上だったけど、みんな20代後半だったと思う。僕はすぐその3人ととても仲良しになった。

 

中年の穏やかなイギリス人の先生が、英語のテストをしたいというのですぐに別室で簡単な会話テストをした。

自己紹介や、何をしに来たか、どこから来たか、など。

IELTS試験を受けるときにさんざん練習したことだ。なかなかうまく話せたんじゃないか?と思った。

 

その日はそれで終わった。

学校にいた日本人のうちの1人の女性、Mさんは僕のホームステイ先と一緒の家にステイしているというので、その家に連れて行ってもらった。

ホームステイ先はとても閑静なところで、英語学校から歩いて5分もかからない場所にあった。典型的なイギリスの住宅だ。

 

イギリスの住宅は2つの家がくっついていることが多い。これを「セミデタッチドハウス」という。くっついているといっても、家としては独立している。

そして、イギリスの入り口は狭い。前庭はほとんどない。けれど、後ろの庭は縦に長く、広い。

藤原正彦のイギリス滞在体験を描いたエッセイ「遥かなるケンブリッジ」を以前読んだことがあったけど、そこではイギリスの家を「ウナギの寝床」と表現していた。僕は実際にイギリスの家を見て、「なるほどこういう事か」と思った。

 

家に入ると、中年の女性が笑顔で出迎えてくれた。その女性に対する第一印象は「デカい」だった。おそらく180センチは超えていただろう。

僕の部屋は屋根裏部屋だった。屋根裏部屋と言ってもとても明るく、大きな窓があり、壁がきれいにペンキで塗られていて、一人で使うにしては十分すぎるほど広かった。

ベッドはダブルベッドサイズで、僕はその部屋をとても気に入った。

 

ホストマザーに聞くと、「息子が夏に使う部屋」だという。その家には10歳くらいの男の子がいた。ほかに大型の犬が2匹。男の子は全然物おじせずに僕に近寄ってきた。おそらく外国人のゲストを迎え入れることに慣れているんだろう。彼の父親はいなかった。いや、正確にはいるんだけど、その家には住んでいなかった。

それから、その家にはもう一人英語学校の生徒がステイしていた。彼女はイタリア人女性で、ラテン系美人の若い女の子だった。彼女とMさんはとても仲良しで、家の和やかな雰囲気を見た僕は「この家の滞在は楽しくなりそうだな」と思った。