イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

異国の孤独感

ハーロウという地方都市のユースホステルに泊まり始めて、ロンドンの部屋探しを本格的に始めた。

もし部屋が見つからなかったら、僕はどうなってしまうんだろう?

 

今回はハーロウで過ごした時間について。

 

英語学校でも、スコットランド旅行でも、常に友人が周りにいて、親切なイギリス人があれこれ助けてくれた。けれど今は一人。

ぼーっと部屋で過ごしてみる。薄暗い部屋で孤独だけが募っていく。ノーパソも携帯もない。ネットも使えない。

僕の唯一の心の慰めは、MP3も再生できるソニーのポータブルCDプレイヤーだった。英語学校時代にウェールズで買ったものだ。僕は日本の曲をMP3にして、何枚ものCD-Rに焼いて持ってきていた。これをいつも聴いて日本の郷愁に浸っていた。

まだ大学すら始まっていないのに、もうホームシックになっていた。

 

外に出て歩き回る。小さなショッピングモールみたいなものがあって、僕はそこでたまに歩き回った。店を覗いても何も買えず、何も楽しくない。

 

銀行口座が必要だと思ったので、僕はモールにあった銀行の支店に行って口座を開きたいと言ってみた。別室に通される。なんか日本の銀行に比べて大げさだなと思った。

身分証明にパスポートを見せると、何をしているのか、住所はどこなのか、いろいろ聞かれた。住所はユースホステルだと言うと、スタッフの若い女性は苦笑いして「ちゃんとした固定住所がないと」と言った。

結局口座は開けなかった。日本の銀行は(当時は)即座に開けた覚えがあったので、正直開けなかったのは予想外だった。もちろん今となっては口座開設の難しさを理解してる。ホステルに泊まるニートの僕に口座を開いてくれる銀行なんて、日本であっても存在しない。

 

ここにいるみんなが僕に無関心、それどころか敵対しているのでは、と思えてくる。それほど心に余裕がなくなっていった。

 

ホステルに帰ると、広間でホステルの主人がパソコンを2台設置していた。ネットを使えるようにしたのだという。僕は嬉しくなってすぐにネットにつないだ。

けれど日本語サイトが表示されない。日本語パックがインストールされていなかった。

このあと何日もかけて、僕はどうにか日本語をインストールした。勝手にインストールしたことはホステルの主人には内緒だ。

 

僕は毎日のようにそこでネットに興じたので、主人がそれを嫌がって僕がいるのに広間の電気をパチパチと消したりした。

 

2000年代の初めで動画サイトなんてない時代だったけど、それでもネットは僕の心の支えになってくれた。

ネットがない時代の留学は本当に大変だったと思う。