英語学校はただの少し大きめの家だった。その一階はダイニングホールと娯楽室があり、ダイニングの横には大きめのキッチンがあった。
今回はそのキッチンのスタッフたちと英語学校の食事の話。
日本にいたとき、英語学校のパンフレットに「食事は抜群においしい!」と書いてあった。イギリスは食事がまずいことがよくネタにされる。僕は正直英語学校の食事には期待していなかった。
ところが英語学校に入ってみると、料理は確かに抜群においしかった。イギリス料理だけでなく、毎日実にいろいろなメニューが出てきたけど、どれも本当においしかった。
正直、イギリス滞在すべての期間を通して、英語学校のころが一番食生活が充実していたように思う。
シェフは太った無口のおじさんで、元イギリス海軍のシェフだったという。いつもはブスッとしてものすごく近寄りがたい人だったけど、陽気になると実に気さくにスタッフと話していた。なんでも感情の浮き沈みが激しいそうで、機嫌が悪いときはキッチンスタッフもあまり近寄らないようにしていたそうだ。
キッチンを手伝うキッチンスタッフは外国人のボランティアだった。彼らは掃除をしたり食事を作ったりと忙しく働いていた。その代わり、学校の寮(というかただの家)に住めたり、仕事の合間に英語を勉強したりできた。
スタッフはドイツ人が多かった。そのうちの一人と僕はとても仲が良かった。彼は実にまじめな典型的なドイツ人という感じで、本業は電気技師だった。のちに彼は宣教師になる。
それからチェコからも来ていた。僕はこのとき初めて本物のチェコ人を見た。その時までは、恥ずかしながらチェコがどこにあるか知らなかったし、チェコとスロヴァキアが違う国になっていたことも知らなかった。
さて、僕の行っていた英語学校は少し特殊で、キッチンの作業は僕ら生徒も手伝うことになっていた。食事後の後片付け当番があって、それぞれのグループが順番にやっていた。子供のころからそういう事に慣れている僕ら日本人は別に何の不満もなくやっていたけど、ドイツ系の若い子らはサボったりすることもあって、僕らが文句を言ったこともあった。
キッチンは広く、とても大きな業務用の食洗器が2台あった。その食洗器はものの10分で食器を洗いあげてしまうようなパワフルな仕様で、食洗器を初めて見た僕はその便利さに驚いた。
今でも食洗器は本当に便利な必需品だと思ってる。日本でも普及すればいいのに。
だいたい日本の食洗器は小さすぎる。
食洗器で洗えないものは手で洗った。僕は洗い物の仕事をしたことがあって洗うのはうまかったので、韓国人の女の子に「君は洗い残しがまったくない」とよく褒められた。
英語学校は週末は閉じている。そのため、金曜日には土日用の食料が入ったビニール袋を配ってくれた。そこにはお菓子やくだもの、サンドイッチや飲み物なんかが入っていた。ホストファミリーの提供は朝食だけだったので、残りの食事はそれでしのいだけど、配られた食料の量は十分だったし、出入り自由の学校寮にはいつでも食料があったので、ひもじい思いをしたことはなかった。