イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

ホストファミリーのこと

英語学校に通っている間、僕はホストファミリーの家に滞在していた。

僕にとって幸運にもそこはとてもいい家だったけど、一般的に留学をするときにはホストファミリーの良し悪しが滞在経験にとても大きな影響を持つ。

 

その家は僕が選んだわけじゃなかった。英語学校がランダムにいろいろな家に割り当てる。だからホストファミリーの家に厄介になる事もあれば、英語学校が持っている寮に滞在することもある。

 

僕のホストファミリーは母と息子の2人暮らしで、大型犬が2匹いて、家はそれなりに大きかった。庭もついていたけど僕は庭に出たことはない。

ホストマザーは身長が高く痩せ気味で、けっこうはきはきとモノを言う人だった。といっても僕は英語が下手で、ホストマザーもウェールズなまりがあったので、深く話した事はない。何を言われても僕はただ薄笑いを浮かべてうなずくだけだったのでそこまで会話をすることはなかった。

 

ホストマザーの息子は10歳前後で、いかにも白人の少年という感じのかわいい子だった。その当時は僕より小さかったけど、きっと今は僕よりはるかに背が高いに違いない。彼の両親ともすごく背が高く、彼自身もその当時足のサイズが28センチもあった。ホストマザーは彼のことをよく「ビッグフット」と呼んでいた。

彼はサッカーが好きで、当時開催されていたワールドカップのトーナメント表に毎日スコアを書き込んでいた。

 

僕のほかに、同じ英語学校に通っていた日本人の女性Mさんもその家に滞在していた。彼女はホストマザーと仲が良くよくおしゃべりをしていたけど、僕は聞いていても何をしゃべっているのかさっぱりわからなかった。Mさんは僕ら4人の日本人の中で一番英語ができた。

あとはイタリア人の若い女の子もいた。彼女は気さくで優しい性格で、僕はよく彼女のノートPCでネットを使わせてもらっていた。イタリア人の女の子に会ったのはこの時が初めてだったけど、彼女は顔が非常に小さくて、とても僕と同じ種族には見えなかった。

 

僕はホストファミリーや同居人とそれなりにうまくやっていたと思う。

ただ、Mさんが言うには、その家庭は父親に難があり、夜中に酔っぱらってよく家に怒鳴り込んできていたらしい。僕は夜は屋根裏部屋にいたので、下の階で何が起こっていたのか知らなった。

その父親はたまに夕食に呼ばれて家に来ていた。僕もその時出会ったことがあるけど、その時はシラフでとても気のいい陽気なおじさんに見えた。夕食に呼ばれるぐらいだからてっきり仲がいいのかと思っていたら、Mさん曰く酔っぱらうとケンカばかりしていたらしい。

Mさんは「息子はもう達観してるみたいだけど、可哀そうだ」と言っていた。

 

この後、同居人は何度か入れ替わるけど、ホストマザーとあまりうまくいかない子もいた。

滞在2か月目、イタリア人の子は去り、代わりにスイス人の女性が来た。その子はいかにもギャルな見た目のティーンの子で、背が高く、いつもスケボーを乗り回していた。彼女は人懐っこく、僕にもよく話しかけてきた。

けれど、その子はホストマザーとはウマが合わないようだった。

どういうトラブルがあったのかは知らないけど、「1日15ポンドしかもらってないのにあなたを世話してるのよ」とホストマザーに文句を言われていたのを見たことがある。

僕はそれを聞いて「15ポンドって安いのか?」と考え込んだ。

 

ある日の朝食時、彼女がホストマザーを怒らせて、ホストマザーが彼女の皿をたたき割るという場面に遭遇した。僕はもう朝食を食べ終わっていたので、そそくさと立ち上がって無言でキッチンを出て行ったけど、ティーンの子は見かけに似合わず小さな子供みたいにシュンとして心底ホストマザーを怖がっていた。

あの時、何か声をかけてあげればよかったかな、と後悔してる。