イギリス留学の思い出

20年以上前に経験したイギリス留学の思い出を取りとめもなく書く

願書を郵送する

志望するイギリスの大学それぞれが要求する願書などの必要書類をそろえたのは、年末が近づくころだった。

このころ、僕はグラスゴーを志望校から外した。インペリアルを志望校に追加していて、しかもインペリアルの要求する英語力を満たしていたので、そっちに乗り換えたのだ。

 

今はネットで申し込みできるのかもしれないけど、20年以上前の当時は願書を郵送しなきゃいけなかった。

イギリスに何かを送るなんて初めての経験だったので、どういう方法で送っていいのかよくわからず、苦労した。

 

英語力の証明にはIELTS試験の結果を送ることにした。前にも書いたけど、僕はIELTSのほかにTOEFLという試験も何度も受けていた。けれどTOEFLの結果はまったく点数が足りていなかったので、結局使うことはなかった。

受験料はもったいなかったけど、しょうがない。

 

僕はそのころIELTSでは総合6.5点までは取れるようになっていた。これはインペリアル、エディンバラグラスゴーの要求する点数を満たしていた。でもケンブリッジとオックスフォードが要求する7.0点はどうしても取れなかった。

仕方ないのでIELTSの結果は後で出すことにした。願書提出を遅らせるのは絶対に嫌だったからだ。イギリスの大学は10月から始まるので、その年の1月にはもう願書を出したかった。

願書だけ先に出しておいて、英語力証明は入学までに提出すればいい。イギリスの大学はけっこう融通が利く。

 

必要書類は各大学によって違うけど、願書、志望動機のエッセイ、推薦状は必ず必要だ。あとは確か財産証明とか、パスポートのコピーとか、写真とか、だった気がする。一番大事なのはIELTSの成績書。これが英語力を証明する。

 

もちろん封筒で送るのだけど、その当時の僕は何を血迷ったのか、ヒモで封をするタイプの封筒を使って書類を送ってしまった。

こういうやつ。

ぐるぐるとヒモを巻き付けて閉じただけで、封のノリ付けはしなかった。

 

当時通っていた大学院の指導教官は別の大学の教授を掛け持ちしていた。その教授は別の大学の方にいることの方が多く、僕の大学に来ることはあまりなかったので、事務的な書類などを頻繁に僕の大学にいる秘書さんに郵送していた。その教授が郵送に使っていた封筒が、こんなヒモ付き封筒だったのだ。

僕は「なるほど、公式文書はこういう封筒を使えばいいのか」と思い込んでしまったのだ。

 

この封筒を使って、ノリ付けもせずにイギリスに願書を送った。イギリスには当時「パーセルフォース」という郵便物を追跡できるサービスがあり、僕はそれを使って郵送した。郵送後は毎日追跡サイトにアクセスしてずっと願書の封筒を追跡し続けた。

 

願書が届くと、郵送だったかメールだったかで「届いたよ」と返事が来る。書類が足らない場合は「書類を追加で遅れ」という連絡が来る。

ケンブリッジエディンバラには運よく届いたようで、連絡がきた。インペリアルはだいぶたってから「ほとんどの書類が届いてない」という連絡がきた。きっと封筒のヒモがほどけてしまったんだろう。こんどはちゃんと封をした封筒で書類を送りなおした。

オックスフォードは全く返事がなかった。

 

ケンブリッジの大学院事務のサイトには選考プロセスをリアルタイムで表示するページがあった。たしか教えられたID番号を入れると、今選考のどのプロセスにいるかが表示されたはずだ。そこにアクセスすると「願書を受け取った」とだけ書かれていた。

 

ついに願書を送ってしまったのだ。

もう後戻りはできない。