今は亡きComputer Based TOEFL、通称CBTという英語試験を受けに行った時の話の続き。
会場はがらんとしていた。そんなに大きくもない部屋にブースがひしめき合っていて、ブースごとにパソコン、というか壁に埋め込まれたPC画面とキーボードとマウスが置いてあった。
その部屋に試験官はいない。別室に女の人が2人ぐらいいて、監視カメラ越しに会場を見ているらしかった。
その部屋に入る前に申込用紙みたいなものを書き、軽く説明を受けた後指定のブースまで案内される。他に試験を受けていた人は数人だった。
席に着くとコンピュータが勝手に試験を開始する。
「次へ」というアイコンを押すと画面が進んでいく。
CBTはリスニングから始まったような記憶がある。突然始まるので聞き逃すのが怖い。
確か問題ごとに画面に静止画の写真が出てきて、どういう状況の音声なのかが分かるようになってたはずだ。
音声が流れ終わると選択問題が出てくるので、マウスで選ぶ。選ぶと次の問題へ進む。
CBTのテスト方式には面白い特徴があった。リスニングで出題される問題の難易度が受験者の回答状況によって変わるのだ。
例えば最初の問題を間違えたとする。するとコンピュータは「こいつには難しすぎたか」と判断して、次の問題はちょっと簡単になる。間違え続けるとどんどん問題が簡単になっていく。簡単な問題なら正解を出しやすくなる。
でも、簡単な問題に正解したところで所詮は低レベル問題。低レベルな問題にどれほど正解しようと、最終スコアは低くなる。
最終スコアを高くするには、この「レベル下げ」を食らわないことが大切なのだ。
僕はこのシステムを事前に知っていた。なので試験中は問題の難易度が気になって仕方がなかった。もし簡単な問題が出題されたら、それはつまり直前の問題を間違えたということを意味するからだ。
自分にとって簡単な問題ばかり続くと「もしかしてむちゃくちゃ間違えてるんじゃ」と気になってしまい、それこそテストどころじゃない。
今はこの難易度が変化するシステムは廃止されている。やっぱり評判悪かったんだろう。
リスニングが終わると文法問題、リーディングと続く。これらは大学受験の英語を似ているように感じた。パソコンに向かって試験を受けている、というところが違うだけだ。
リーディングの時は確か試験官のお姉さんがメモ帳を持ってきてくれたような気がする。ただ、僕は英文を読むときは線を引く癖があって、モニタに映る文章には線が引けないのでこれにはちょっと困った。
リーディングが終わるとちょっと休憩があり、その後に書きテストがある。書きといってもパソコンに向かってキーボードでタイプするものだ。
「テーマに従ってエッセイを書け」という問題だったと思うけど、かなり時間が足りないので考えてる暇がない。まさに打ちながら考える感じ。ただ、パソコン入力はやっぱり手書きに比べてとても楽だ。間違ったらすぐ消せるし、書き直しも簡単にできる。
時間がないので書き直しなんかできないけど。
CBTはスピーキングテストがないので、ライティングでテストは終わり。
この後、なんとすぐに「概算スコア」が画面上に出る。「あなたのスコアは何点から何点の間ぐらいですよ」とスコア範囲を教えてくれるのだ。もちろんそれは最終結果じゃないけど、自分が必要スコアに達したかどうかすぐに分かる。
僕のスコアは、ダメだった。
やっぱりリスニング簡単すぎたもんなあ、やっぱりなあ、とか思いながら凹む。
たしか概算スコアと一緒に、「このスコアを受け入れますか?」的な質問が表示された気がする。キャンセルすると、試験を受けたという記録自体が消える。
確か僕は毎回スコアを受け入れていたけど、結果は惨憺たるものだった。
毎回しょんぼりしながら帰った覚えがある。