イギリスの大学に入るにはどうすればいいのかまったく情報がなかったので、イギリス留学のガイドブックみたいなものを買った。
ムック形式のその本にはイギリス国内のほとんどの大学が1校につき1~2ページ紹介されていて、各大学が要求する英語力レベルも書かれていた。とても参考になるいい本だったと思う。本のタイトルは覚えてないけど、イギリス文化に関するピーターバラカンへのインタビュー記事が載ってたことは覚えてる。
(ピーターバラカンのその記事には「今どきのイギリス人はティーカップで紅茶なんか飲まない、コーヒーをマグカップで飲むよ」と書いてあったけど、のちにイギリスに渡ってそれはだいたい本当だということを知った。)
英語力はIELTSというテストを受けて証明する。結果は1~9のスコア(0.5点きざみ)で与えられ、確か最低5.5点ぐらいあればどこかの大学には応募できたような気がする。最高の要求レベルはオックスフォードとケンブリッジの7.0点。僕はケンブリッジに行きたかったのでこの最高要求レベルを目指さなきゃいけない。これは大変だと身震いした。
ネットでも情報を調べた。
当時の大学サイトはいたってシンプルだった。余計な事は何も書いてない。ケンブリッジ大学のサイトはたしか水色一色の背景に大学ロゴ、あとはテキストだけ、という感じだったと思う。他の大学も見てみたけど、だいたい同じようなものだった。
毎日ネットで大学サイトにアクセスしては、その大学に本当に行った気になって一人浮かれていた。でも肝心の情報はいまいちよく分からない。
ケンブリッジのサイトしか覚えてないけど、紙の募集要項冊子を取り寄せるための申込フォームがあった。詳しい情報を知りたかった僕はこの冊子が欲しかったけど、当時海外のサイトに自分の個人情報を入力することはとても勇気のいることだった。しかも、イギリスから冊子を送ってくるなんて、にわかには信じがたいことだった。ほんとにタダで、しかもあの天下のケンブリッジが、日本の一般人からの申し込みに応じて募集要項を送ってくるのか?
ケンブリッジは本当に送ってきた。2週間弱だったと思う。かなり迅速でびっくりした覚えがある。
その冊子はA5サイズほどで、ソフトカバー、外面は水色一色だった。厚さは普通の文庫本ぐらい、白黒で文字だけ、数百ページくらいあった。
その冊子は全学部が網羅されていて、各学部の紹介、求める学生像、要求される英語力や応募方法が学部ごとに書かれていたと思う。
申込用紙は付いていなかった。そういう用紙はネットでダウンロード、という形式だった気がする。
ケンブリッジが何かを送ってきた、というだけで僕はまるでその大学に受かったかのような気分になって舞い上がった。うれしくてうれしくて、何度も何度もその冊子を読んだ。
募集要項を取り寄せたのは留学予定年の2、3年前。つまりまだ早すぎる。
でもそんなことはどうでもよかった。モチベーションが激上がりしたのだから。